中小企業診断士二次試験 ふぞろいな合格答案の使い方
本日は、中小企業診断士試験の二次試験における、超有名な参考書「ふぞろいな合格答案」の使い方について紹介します。
二次試験の勉強ステップとして、事例Ⅰから事例Ⅲについては、前提知識は一次試験の知識で十分なので、『そもそも二次試験はどういう試験かを把握→問題集を活用し過去問を解く→何周か繰り返す』というステップで考えるとよいです。
事例Ⅳはまた別で、知識を付けるステップが必要です。
よって、『参考書などで二次試験用の知識を身に付ける→過去問を解く→何周も繰り返す(暗記するレベルで)』というステップで考えるとよいと思います。
本日は、事例Ⅰ~Ⅲのステップにおける「問題集を活用し過去問を解く」ところにスポットを当てて、具体的に「ふぞろいな合格答案」の使い方を紹介します。
中小企業診断士試験にご興味のある方は「まとめ記事」を参考にしてください
目次
1.そもそも二次試験はどういう試験か
問題集を活用し過去問を解くステップの前に、「そもそも二次試験はどういう試験か?」ということを考えます。
結論から申し上げますと、「課題のある企業に提言をする」という試験です。
イメージは上の図です。
現状があり、あるべき姿があり、そのギャップが問題です。
問題を解決するために、課題を設定し、その具体策が課題解決策です。
具体的に考えましょう。
現状は、「強み」として「地元の食材を使ったおいしいパン」があり、「弱み」として「知名度がない」という状況です。
あるべき姿は、「短期目標」として「黒字化」、「ビジョン」は「地元食材の知名度を上げたい」です。
問題は「赤字」であることです。
利益=売上-固定費-変動費なので、課題は「売上を上げる」か「固定費を減らす」か「変動費を減らす」か、となります。
そこで、具体的な課題解決策として、「客数アップのため地域にDMを発送する」「来店頻度を上げるためポイントカードを作る」「固定費削減のため電力会社を変える」などを設定します。
そして、長期的ビジョン達成に向け、地元食材の知名度アップのため協業で新たな製品を作る、などを長期的アクションプランとして検討する、などです。
この一連の流れが「企業診断」であり、これらの「現状」「あるべき姿」「問題」「課題」「課題解決策」を問うのが、「中小企業診断士試験の二次試験」です。
これを把握していないと、勉強効率が大きく変わってしまうので、まずはこれをしっかり把握しておきましょう。
(この部分を中心に説明したYouTube動画を埋め込みしておきます)
2.問題集を活用し過去問を解く
では次に「問題集を活用し過去問を解く」ステップについて具体的に考えていきます。
使う参考書は冒頭でもお話しした通り「ふぞろいな合格答案」シリーズです。
ここで、ふぞろいな合格答案の簡単な特徴をお伝えします。
ふぞろいな合格答案の特徴
- 実際に試験を受けた受験生の再現答案を分析している
- 令和元年度は、全受験者約6,000人に対し約260人分のサンプル(n数260 4.33%)
- 合格者だけでなく、不合格者の答案も分析している
- 「キーワード」「加点方式」という方法
- 実際の受験者の紹介と試験当日の行動・思考紹介
この参考書にお世話になった受験生が、試験後に再現答案を送ることで成立してます。
私も送りました。
令和元年度は約6,000人の受験者(N数6,000)に対し、約260人のサンプル(n数260)と約4.3%の分析が行わており、信頼できるデータであると思われます。
キーワードによる加点方式を採用しており、当然そこに「全体としての一貫性」「文章の構成」などで点数が変わる可能性があると思われるが、採点基準が明確にされていない試験の中である程度信頼できる方法であります。
私はこの「ふぞろい式」に絞り、勉強の効率化を図りました。
これから購入する方は、以下の分をとりあえず購入しておけばOKです。
では、いよいよ使い方の部分です。
ふぞろいの使い方
- 現状、あるべき姿、問題、課題は自分でしっかり整理してする
- 全体的に論点がずれていないか確認する
- 満点解答ではなく、キーワードを何個か使い、15点以上の答案を自分で作ってみる
このような使い方です。
まず、与件文を読み、前章の「そもそも」という話で触れたように、「現状分析」「あるべき姿」「問題」「課題」を整理します。
その上で設問を解いていき、キーワード加点方式で採点していきます。
この際に、重要な注意があります。
キーワード加点方式とは言え、当然ですが「結論」が違えば点数は入りません。
具体的には、「市場の縮小」による「業況悪化」という解答の一部のうち、「市場の縮小」が重要キーワードで5点だとします。
この場合、「市場の縮小」はあったが「業況は良化」した、という解答になった場合、おそらく点数は入りません。
文章の全体として、模範解答と方向性が一致しているか確認した上で、採点をしましょう。
上記は極端な例ですが、実際に解いてみて採点をすると、キーワードうんぬんの前に、そもそも解答の方向性がずれるということも多く発生します。
なぜ、そのような解答の方向性になるのか、これをしっかり把握しましょう。
そして、最後に「15点分」程度のキーワードを使い答案を作ってみることです。
実際の試験では、100点は無理です。
私は「70点」くらいを取りに行くイメージでした。
そのためにやることが、20点問題を15点分くらいのキーワードを使って答案を作ってみることです。
例えば、「令和元年度事例Ⅰ・第1問」です。
A社長がトップに就任する以前のA社は、苦境を打破するために、自社製品のメンテナンスの事業化に取り組んできた。それが結果的にビジネスとして成功しなかった最大の理由は何か。100字以内で答えよ。
令和元年度事例Ⅰ第1問
満点解答はおそらく80分の試験の中で作るのはなかなか困難です。
しかし、15点くらいなら作れます。
「市場の縮小」「過度な個別対応による部品在庫増加」「売上減少」「収益悪化」これで15点分です。
このキーワードで答案を作ってみましょう。
解答例
最大の理由は収益が悪化したからである。①市場の縮小により売上が減少傾向にあり、②メンテナンス事業において過度な個別対応による部品在庫の増加が発生しコストが増加したため、ビジネスとして成功しなかった。(99文字)
少し物足りなさは感じます。
しかし、聞かれたことに、正しい方向性で答えられていると思います。
ここに、受動喫煙問題・高コスト体質などのキーワードを含めることができれば満点に近づきます。
高得点キーワードを抽出し、解答例を作ってみることで、文章を書く力もアップします。
だんだん慣れてくると「これくらいの答案でも合格圏内に入れる」という感覚が分かってきます。
実際に私は、80分の試験の中で「妥協」もかなりありました。
もっとよく作れるだろうけど、とりあえず全部埋めなきゃならない、だからこれくらい「妥協」した答案でもいいか、という感じです。
7割~8割くらいの解答を作る、なかなか効果的な方法だと思います。
あとは、これは私が意識していたことですが、中学生が読んでも分かる文章で書くことを心がけました。
たまに、ネットの高得点答案を探していると、何を言っているのか分からない文章があります。
これは私の読解力のなさと、知識のなさが原因なのでしょうが、1回読んでも頭に入ってこない文章だと実務においても面倒です。
やはり、読みやすく、伝わりやすい文章を書くことを意識しました。
また、字のきれいさについての持論は、それで点数が変わることは絶対にない、ということです。
例えば、自分が採点者であった場合に綺麗・汚いで第一印象が変わるかもしれないですが、そこで意識をしっかり保つと思います。
「汚い」というより「雑」がだめだと思います。
雑な診断書を提出されたら嫌ですからね。
字が下手でも、「丁寧に」「消しゴムはしっかりかけて」答案を作れば大丈夫だと思います。
3.繰り返し解いていく
あとは、繰り返し解いていくことです。
さかのぼる年数は、時間と相談し、新しい年度から最低でも5年はやるといいと思います。
一度解いたことがあっても、なかなか理想的な解答を作れないのがこの試験です。
なので、周回を重ねることは意味のあることだと思います。
重要なことは、文章を書く能力もそうですが、やはり論理的思考能力です。
なぜ、高得点の答案にこのようなキーワードが含まれているのか、という視点を持ち、与件文をよく読むことが必要です。
この論理的思考能力ですが、多くの人が不足しているのが実情だと思います。
サラリーマン時代に痛感しました。
通常企業における「あるべき姿」というのは「理念達成」です。
理念に「顧客利益」「従業員満足」「地域発展」などが入っていれば、取り掛かる仕事においてはそれらが、意思決定材料になります。
論理が破綻する人の特徴は、ここに「評価」「保身」「出世」などの個人的感情が入ります。
それが当たり前になると、論理的に物事を見なくなり、上の感情を読むこと、下の感情をコントロールすることに目がいきます。
そして、同じ物事においても、結論が変わることが起こり始め、現場がどんどん混乱していきます。
こういうことがあまりにも多くの企業で起こるため、論理的思考能力を鍛える場がないので、不足しているのです。
以上のようなことが、「論理的に考える」ということです。
「なぜ論理的思考能力を持つ人が少ないのか」、理由は「実社会において本来共通の意思決定材料となる指標は存在している」「にも関わらず、個人の感情で結論が変わることが頻発している」「そのため論理的に考える機会が減り、人の感情に迎合または感情をコントロールすることが起こっている」。その根拠として、実際に15年以上のサラリーマン生活で「この人は冷静に論理的にものごとを見れているな」という人には滅多に会うことができませんでした。
みたいな感じですね。
4.まとめ
以上が、特に事例Ⅰ~Ⅲにおける『そもそも二次試験はどういう試験かを把握→問題集を活用し過去問を解く→何周か繰り返す』というステップの紹介となります。
そして、特に「問題集を活用し過去問を解く」というステップに焦点を当てて解説しました。
特に7~8割の答案を、キーワードを抜粋して自分で作ってみるという練習は、効果的だと思います。
最も大事な「論理的思考能力」を身に付けましょう。
これは試験に限らず、ビジネスにおいても非常に役立つはずです。
最後に、ふぞろい以外の重要参考書を紹介します。
全知識は、二次試験に必要な知識が網羅的に書かれている非常に役立つ参考書です。
30日完成は、事例Ⅳを始めるにあたって、まずこれからやるとよい、という参考書です。