SWOT分析 簡単・実用的なやり方を説明
この記事では、SWOT分析を行う上での簡単かつ実用的なやり方を解説します。
事業再構築補助金の事業計画書もSWOT分析が必須となっておりますね。
SWOT分析とは、自社の置かれている状況を認識し、戦略の方向性を見極めるために実施します。
表面的に分析するだけでは、分析が甘くなり正しい方向性へ進むことができない可能性があります。
どのような視点で行えば良いのか、具体例を交えながら見ていきましょう。
1.そもそもSWOT分析とは
そもそもSWOT分析とは、下記の頭文字であります。
そして、それぞれをどのような視点・フレームワークで見ればよいのかを示します。
SWOT分析
- 強み(Strength):内部環境・経営資源・VRIO
- 弱み(Weakness):内部環境・経営資源・VRIO
- 機会(Opportunity):外部環境・PEST分析・5フォース分析・ジオデモサイコ
- 脅威(Threat):外部環境・PEST分析・5フォース分析・ジオデモサイコ
まず、強みと弱みは内部環境分析であります。
経営資源の観点とVRIOの観点で強みなのか、もしくは弱みなのかを考えるといいでしょう。
次に、機会と脅威は外部環境分析であります。
外部環境とは、基本的には自分の力では変えられないものを言います。
PEST分析、ジオデモサイコの観点、5フォース分析で機会なのか脅威なのかを考えるといいでしょう。
様々なフレームワークがありますが、ここに書いてあるフレームワークを使用すれば、ほぼ漏れなく分析することができます。
できる限り簡略化して、最大限効果が見込めるやり方をしていきましょう。
次章より、具体的に掘り下げていきましょう。
2.内部環境分析
まずは、内部環境分析(強み・弱み)です。
これは、経営資源とVRIOという2つの観点で見ていきしょう。
経営資源
- ヒト
- モノ
- カネ
- 情報
まずは経営資源です。
経営資源は上の4つで考えます。それぞれ、テンプレになりそうなものをいくつか紹介します。
具体例
- ヒトの強み:職人の技術力、経営者の人脈、資格保有者が多い、若い、十分な人手があるなど
- ヒトの弱み:後継者がいない、高齢化が進み若手がいない、人手不足、経験不足(未熟)など
- モノの強み:人気のある商品(製品)、最先端機械、自働化が進んだ工場など
- モノの弱み:シェアが落ちてきた、設備が古く故障対応に追われるなど
- カネの強み:高い収益性、現預金が多い、資金調達力が高い、投資家からの信頼が厚いなど
- カネの弱み:赤字である、資金繰りが苦しい、借入が多い、資金調達余力が少ないなど
- 情報の強み:何年にも渡る顧客データの蓄積、自社にしかないノウハウ、最新テクノロジーの活用など
- 情報の弱み:データベース化されていない、ノウハウが属人的、IT化についていけていないなど
どうでしょう?こういった観点で考えると色々と浮かんでくると思います。
本当に差別化が図れている強みなのかどうかは、まず置いておいて、自社のことは思い浮かびやすいと思うので、思いつく限り列挙していきましょう。
次のVRIO分析で、本当に強みと言えるものなのかどうかを検証します。
VRIO分析
- V:Value(経済的な価値)
- R:Rareness(希少性)
- I:Imitability(模倣可能性)
- O:Organization(組織)
このフレームワークは、単独で物凄く重要な考え方なのですが、ここでは「強み」が本当に強みなのかどうかを判断する基準として利用します。
自社の強みとして考えていることでも、それほど希少性がなく、模倣も簡単なものであれば、それは強みではありません。
例えば、「うちの銀行には100人のFP保有者がいます」ということを強みとしている銀行があるとします。
しかし、FP自体はそれほど難関な資格ではなく、希少でもなければ、模倣も簡単です。
これだけでは強みとは言えません。
FP資格を活用した独自サービスがあり、それはすぐに模倣することができず、組織に根差した文化がそのサービスを可能としているといった場合は、大きな強みとなります。
その場合は、FPという資格保有者ではなく模倣困難なサービスと組織自体に強みがあるのです。
つまり、有資格者を増やすだけなら差別化はできませんが、それを生かした独自サービスを作れば差別化要因となり、そのサービスが模倣困難であれば「強み」となるということです。
このように、VRIOの観点で強みを見直し、それが希少であったり、模倣困難であったりした場合、それは本当に強みであると言えます。
そんな「強み」なんて無いよ…と思う方も多いと思います。
しかし、例えば「社長の人脈」という強みは、一見単純に見えますが、希少・模倣困難な強みの代表格です。
必ず強みは存在してます。
逆に、「最新設備」が強みだという場合、それがお金を払えば誰でも買えるものであれば、強みとは言えません。
使いこなすのに、熟練技術や独自ノウハウが必要という条件が入った場合に、強みとなり得るものです。
経営資源で強み・弱みを列挙したあとに、このVRIOという観点で本当の強みを見つけましょう。
3.外部環境分析
次は外部環境分析(機会・脅威)です。
外部環境は、PEST分析・5フォース分析・ジオデモサイコの視点で考えます。
まずはPEST分析です。
PEST分析
- P:Politics(政治面)
- E:Economy(経済面)
- S:Society/Social(社会/文化)
- T:Technology/(技術面)
具体例を見ていきましょう。
具体例
- P:Politics(政治面):各種規制法案、エネルギー関連法案、など
- E:Economy(経済面):消費税、社会保険料、年金など
- S:Society/Social(社会/文化):少子化、高齢化、人口減少、インバウンドブームなど
- T:Technology/(技術面):EC、IoT、5Gなど
このような形です。
重要なのは、受け手によって機会にも脅威にもなるということです。
例えば、規制を受けることで悪い影響を受ける企業もあれば、それが機会となり売上が伸びる企業もあります。
高齢化も、高齢者をターゲットとしている企業にとっては大きな機会です。
日本国内をターゲットとしているか、世界をターゲットとしているか、では対象とすべき人口動態は大きく変わります。
自社にとってPESTの観点で、何が機会なのか・何が脅威なのかをしっかり分析しましょう。
次は5フォース分析です。
5フォース分析は自社の業界に関する脅威の分析です。
5フォース分析
- 既存の競合他社の脅威
- 新規参入者の脅威
- 代替品の脅威
- 買い手(の交渉力)の脅威
- 売り手(供給業者の交渉力)の脅威
具体例
以前こちらの記事で「信用金庫の5フォース分析」をしたので、その例です
- 競合:メガバンク、地方銀行、政府系金融機関などと競合
- 新規参入:ネット銀行、ネット証券など
- 買い手:若い人は利便性からネット系を利用、融資利用者は低金利へ
- 売り手:預金する人。金融リテラシーが向上していくと、預金者は減少
- 代替品:ファクタリング、クラウドファンディング、キャッシュレス化など
市場規模は非常に小さいニッチ市場でも、競合が少なく参入障壁が高ければ、競合・新規参入の脅威は少ないと言えます。
この「競合」を中心とした脅威の分析は非常に重要なポイントとなります。
ここを適当にやってしまい、新たな市場に進出した場合、想定した利益が見込めず赤字になってしまうということが発生します。
参入障壁が高い(機会)か低い(脅威)かということもよく分析しておきましょう。
参入障壁の低い業界はそれだけで脅威となります。
競合と新規参入は分かりやすいと思うので、他の3つを詳細に見ていきましょう。
売り手は、仕入先です。
例えば、パン屋さんの場合は小麦の仕入価格です。
基本的に自社に価格決定権はない(収穫量が少ないと価格高騰する)ため、売り手優位(自社にとって脅威)となります。
買い手は、販売先です。
どこにでもあるパンを作っていると、価格競争に巻き込まれてしまいますが、高付加価値化ができていると自社優位となります。
代替品は、競合を調査する場合に競合のパン屋だけでなく、他の飲食店も脅威となるということです。
たとえば、空腹を満たすという目的であれば、競合は非常に多岐に渡ります。
できる限り、目的を分散させて代替品の脅威をなくすことが必要です。
つまり、食だけでなく、場所の提供、体験の提供など他の要素を加えるということです。
5フォース分析により、脅威を見つけるだけでなく、自社の機会(や強み)を発見することもできます。
最後にジオデモサイコです。
ジオデモサイコ
- ジオグラフィック(地理学的属性)
- デモグラフィック(人口統計学的属性)
- サイコグラフィック(心理学的属性)
これは、PEST分析や5フォース分析をより深く実行するために必要な観点です。
例えば、「パン屋」「喫茶店」など一括りの業界で分析するのではなく、どんな場所(地理的)にあって、周囲の人口動態や、その人たちの価値観はどうなのか、などの観点を持つことで、より深く分析できるということです。
これは、マーケティングにおいて重要な考え方ですが、当然現状の環境分析をする上でも欠かせない視点です。
このようにして、外部環境分析を行っていきます。
マーケティングに関する記事はこちら
4.クロスSWOT分析
以上の内部環境分析、外部環境分析で、SWOT分析は完了です。
ただ、これは自社の現状(立ち位置)が分かっただけで、これからどこにどうやって進むのかという戦略の方向性を考える必要があります。
その際に行うのがクロスSWOT分析です。
クロスSWOT分析
- 強み × 機会:強みを生かし、機会を得る
- 強み × 脅威:強みを生かし、脅威を乗り越える
- 弱み × 機会:弱みを補強して、機会を得る
- 弱み × 脅威:占める割合が多ければ撤退
例えば、「インバウンド客が増加している」という機会があったとします。
「外国語対応が可能」という強みがあれば、強みを生かして機会を得ることができます。
「外国語対応ができない」という弱みならば、それを補強して機会を得る、ということです。
このように、戦略の方向性を決めることができます。
例えば昨今のブームにより、「フルーツサンド店」が増加し、昔から「フルーツサンド」を販売している自社にとってはライバルが増加し脅威となったとします。
「固定客が多くいる・独自のルートで仕入れたおいしいフルーツ・圧倒的ブランド力」などの強みを生かし、脅威を乗り越える戦略を取れる企業もあれば、撤退という戦略に進む企業も出てくると思います。
このように、SWOT分析をしたあとに、そこから色々な戦略を練っていき動き始めることが重要です。
5.まとめ
どうでしょう?
内部環境分析は経営資源とVRIO、外部環境分析はPEST分析・5フォース分析・ジオデモサイコ、これだけでかなりまともなSWOT分析が完成します。
重要なのは、現状分析を戦略に生かすことです。
この戦略の方向性を決めるのがクロスSWOT分析です。
中には、正確なSWOT分析とは、のようなことを気にする方もいらっしゃると思いますが、正直上に書いた要素が入っていれば十分です。
重要なのはその後の戦略です。
そして決定した戦略の方向に、一歩踏み出すことです。
この意思決定のスピードを早めていくことが、現状の早すぎる環境変化についていくためのコツだと思います。
ぜひ、分析に役立てて下さい。