本紹介②嫌われる勇気 人間関係に悩みを抱える全ての人が読むべき1冊
今回ご紹介するのは『嫌われる勇気』(著者:岸見一郎・古賀史健)です。2013年12月13日に発売され、国内で200万部・世界で500万部以上売れている名著です。
「アドラー心理学」を世に広めた1冊でもあり、発売から7年以上経った今でも売れ続けています。
私にとって大げさではなく、「人生を変えた1冊」です。この本を読んで、起業という道に迷いなく進むことができました。
ちなみに、前回は人生の価値観を変えた本としてライフシフトを紹介してます。
書いてあることを淡々と要約しても、あまり響かない本だと思います。
「心理学」なので、その時点での読む人の心理状態によっても大きく感想が変わると思います。「どのような心理状態の人が」この本の「どのような言葉で」「どのように思考が変化したのか」という点が非常に重要だと思うからです。
よって、今回はこの本を読んで「どのように私の思考が変化し」「独立・起業」という道に至ったのかを、「私自身」を具体例として紹介してみたいと思います。
当時の私と似たような悩みを抱える人は多くいると思いますので、そのような方々の少しでもお役に立てればと思います。
他の本紹介にご興味のある方は「まとめ記事」を参考にしてください
目次
1.序章
この本の特徴として、悩みを抱える「青年」と哲学者である「哲人」との対話方式で話が進んでいきます。
ドラマ性・人間性があり、物語として非常に読みやすくなっております。青年独特の絶妙な言い回しなども読んでいて面白いです。
青年と哲人の五夜にわたる対話で物語が構成されています。
この物語の進行とあわせ、当時の私の心理状態がどのように変化していったのかを書いていきます。
まずは、前提条件である私の当時の状況を説明します。
当時の状況
- 平成31(令和元)年1月に職場での環境が変わる
- 環境になじめないまま、3月にキャリアアップのため中小企業診断士の資格取得を決意
- 8月に中小企業診断士1次試験を受け、合格
- 10月に中小企業診断士2次試験を受けたが、おそらく不合格(結果発表は12月)
- 勉強を通して、独立したいという思いが湧いてきていた
- 11月、読書を始めようと本を探し「嫌われる勇気」を見つけ購入
心理的な悩みとして、
心理的な悩み
- 結果を出しづらい環境になった。上司や周りに認めてもらいたく試験を受けた
- 試験は「1次試験合格」と結果を出した
- 決して簡単ではないことができた。それでも状況は改善しない
- 敵対的に接してくる人もいる
- どうすればよいのか分からない
- 弱音は誰にも吐きたくない
- もっと自分を必要としてくれる場所はあるはず。独立するか…。
という感じです。
もちろん主観ですし、当時すごく仲良くしてくれた方々が身近にいましたし、今でもその方々には感謝してます。
ただ、当時は苦しい想いの方が先行してました。
「今は必要とされている感じがしないが、自分を必要としてくれる場所はあるはず。」と思い、独立を悩んでいました。
このような状態で「嫌われる勇気」という題名に惹かれ、この本を手を取り、読み始めました。
2.第一夜 トラウマを否定せよ
物語は、コンプレックスの塊で他者の目が気になり、他者の幸福を素直に祝福できず自己嫌悪に陥っている「青年」が、「哲人」を訪れ
「人は変われない」
という立場で話をはじめ、それに対し哲人が
「世界はシンプルだ。世界がどうであるか、ではなくあなたがどうであるか。」と返すところから始まります。
「変われない」とする青年の主張は、過去の様々な出来事が原因となり今の自分があるので、変われないのだ、という原因論に基づく主張です。
一方哲人は、過去の経験に自らが意味を与え、変わらないことを「善」とし「目的」としている、という目的論であると主張します。
具体的には、過去につらい経験があり引きこもっている人は、「つらい経験」という原因で引きこもっているのではなく、「引きこもっている方が楽」と引きこもるという目的をもち、それを善として選択しているということです。
他にも、「やたらと怒ってくる上司などは、部下に原因があるのではなく、怒ることで相手を屈服させたいという目的がある。」とも言います。
哲人は、トラウマを明確に否定し、「これまでの人生に何があったとしても、今後の人生をどう生きるかについて何の影響もない」、「変わらないという決心をしている。」「変われない自分への言い訳としてやれない理由を探す。」と、一気にたたみかけ、第2夜へ続きます。
第一夜を読んでの心境の変化
テーマである「トラウマの否定」については、すんなり受け入れることができました。もともと、「目的論」で考えていたからです。
ただそれは、人生・ライフスタイルといった大きなステージでの話であり、1つ1つの行動については「原因論」で考えていました。
具体的には、「過去にどんな意味を与えるのかは自分次第」、「変わらないという選択は、変わらないことが楽だから」という大まかなことは目的論の考え方でした。
一方、「自分がイライラしているのは周りのせいだ」「自分がつらいのは理解をしてもらえないからだ」と、細分化された行動については原因論で考えることが多かったということです。
イライラしている理由、つらいと思う理由は、と目的論の立場で自分の感情を俯瞰して見た場合、「それらの感情を利用し、現状から抜け出す(やめる)という目的を果たそうとしている」のだと気づくことができました。
さらっと書いてますが、物凄く大きな変化でした。自分の感情の面もそうですが、周りに対する考え方が大きく変わり、気分が楽になりました。
例えば「高圧的に接してくる人」は、「お前が原因だ」という原因論のもと行動しているのかもしれないですが、実際は「上下関係をはっきりさせる」という目的論で動いていると思えることで、自己に対する過剰な罪悪感を持たずに済みました。
目的が、「私を成長させる」「職場環境を改善させる」ということであれば、高圧的態度を取るという選択は最善ではなく、他にいくらでも取り得る行動があるからです。
すごく楽になりました。
身の周りにいる「機嫌の悪い人」「忙しそうにしている人」「否定的なことばかりを言う人」を原因論ではなく目的論で見てみると、想像に任せますが本当に面白いです。
逆に「いつも笑顔でいる人」「肯定的なことを言ってくれる人」「手を止め話を聴いてくれる人」を目的論で見ると、本当に素晴らしいということに気付きます。
高い満足度を得られ、「第二夜」へ進みます。
3.第二夜 すべての悩みは対人関係
物語は第二夜へ。
「目的論」という考え方は分かるが、「なぜ自分を嫌っているのか」その目的が分からない。自分を嫌いになるメリットがない。やはり嫌いになっている原因があるはずだ。
という青年の主張から始まります。
これに対し哲人は、
人間の悩みは全て対人関係の悩みであり、自分を嫌う目的は「他者との関係の中で傷つかないこと」である。
だから自分の短所を見つけ嫌いになり、対人関係そのものに踏み出さないという選択をしているのだ。
と主張します。
そして
- 劣等感
- 劣等コンプレックス
- 優越コンプレックス
の話をします。
劣等感とは、本来は「理想の自分」との比較から生まれ、前に進もうとする原動力となる健全なものです。
一方、劣等コンプレックスは言い訳に使い始めた状態であり、具体的には「私は学歴が低いから~できない」などです。
優越コンプレックスは、「優れているように見せる」「過去の栄光にすがる」「自慢する」という状態であり、その背景には「そうでもしないと自分を認めてくれないと恐れている」という思いがあります。
そして、これらは「競争」があるから生まれます。
競争の先には勝敗があるが、人生は競争ではなく勝敗はないのです。
競争争いに乗ってはならない。
直面する人生のタスクをどう乗り越えるのかである。
ということで第三夜へと続きます。
第二夜を読んでの心境の変化
「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」、という哲人の主張に対し、青年と一緒に「全て」は言い過ぎだろう、と思いながら読み進めていきました。
しかし、面白いくらい論破されます(笑)。
そして、劣等コンプレックス・優越コンプレックスの話も、グサグサ心に刺さります。
「自分は〇〇だから~できない」と劣等コンプレックスを振りかざして言い訳にすることもあれば、自慢の背景は劣等感である、など思いあたるふしがありすぎて(笑)。
一方、ここでも救われます。
「優れているように見せる」「過去の栄光にすがる」「自慢する」という人の背景が「自分を認めてくれないと恐れている」と思って見てみると、本当にその通りだと思えました。
あぁ、あの人もつらいんだな、と思えることでこれまで敵視していた人にも親近感を持つことができ、非常に気が楽になったのです。
あとあと、会社を辞めるころには、敵対という感情すらなくなりました。
「人生は競争ではない」「自分の人生のタスクをどう乗り越えるのか」と、改めてそこに目を向けた上で第三夜に向かいます。
4.第三夜 他者の課題を切り捨てる
第三夜は、「対人関係の悩みは、承認欲求に集約される」という青年の主張から始まります。
そして、哲人は「アドラー心理学は承認欲求を否定する」と言います。
これに対し青年は、
「承認欲求こそ、我々人間を突き動かす普遍的な欲求ではありませんか!」
「人間を孤立へと追いやり、対立へと導く、唾棄すべき危険思想だ!不信感と猜疑心をいたずらに搔き立てるだけの、悪魔的教唆だ!」
と発狂します(この言葉選びが面白いです)。
これに対し哲人は、
「他者からの承認をもとめ、他者からの評価ばかりを気にしていると、最終的には他人の人生を生きることになる」
と返します。また、賞罰教育(褒めてくれるからやる、褒めてくれないからやらない)の危うさや、仕事の主眼が「他者の期待を満たすこと」になる苦しさや危険性についても話します。
ではどうすればよいのか、という青年の問いに対して、哲人は
「課題の分離」をせよ、と伝えます。
課題の分離とは、自分の課題と他者の課題を分け、他者の課題は切り捨てること、であります。
「馬を水辺に連れていくことはできる(自分の課題)が、水を呑ませること(他人の課題)はできない。」
「自分の信じる最善の道を選ぶこと その選択について他者がどのような評価を下すのか、これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない。」
「誰からも嫌われたくないと、他者の期待を満たすように生きることは自分に嘘をつき、周囲にも嘘をつく生き方。」
「自由な生き方とは、他者からの評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れない。私のことを嫌うかどうかは他者の課題。」
これらの主張に対し青年は「なんという結論だ」と言いながらも納得し、「嫌われる勇気」を持てば対人関係は一気に軽いものへと変わると言われ、第四夜そして第五夜へと続きます。
第三夜を読んでの心境の変化
この章が最も衝撃的でした。価値観が大きく変わりました。
というのも、人は承認欲求を前提で生きていると認識していたからです。
社会人なら誰しもがマズローの欲求5段階説を知っていると思いますが、承認欲求が満たされて初めて自己実現欲求が満たされると思ってました。
つまり、他者から認めてもらう必要があるし、他者の承認欲求を満たすように接していかなければならない、ということが行動原理の基準となっていました。
ただ、他者の期待を満たすように生きることは自分に嘘を付くことだ、という言葉で、「確かに」としっくりきました。
「他者からの評価を気にせず、他者の課題に土足で踏み込まない。」
多分これが私の求めていた考えの基準なのだと思います。だからすんなり受け入れられ、実践できたのだと思います。
私の悩みのほぼ全てが「他者に認められるにはどうしたらいいのか」ということに集中していました。
「そもそも、他者に認められる必要はない、それは他者の課題」だ、と言われたら衝撃ですよね。
この章を読み終わる頃には、もう気が晴れていました。
何をすべきか、必死で考えていたことの大半が、やる必要のない他者の課題だったからです。
では、承認欲求ではなく、何を基準に行動すべきなのか、というのが第四・五夜で語られていきます。
5.第四夜 世界の中心はどこにあるのか、第五夜 「いま、ここを」真剣に生きる
第四、五夜は重要な点だけをまとめます。
「幸福とは、貢献感(役に立っているという主観的感覚)である。」
「他者貢献という星を掲げていれば、迷わない。嫌われる人には嫌われても良い。」
「人生の意味は、あなたが自分自身に与えるものだ。」
という点です。他にも、「共同体感覚」「褒めてはいけない」といった話などあるのですが、大まかに要約すると上記3点です。
他者からの承認ではなく、他者への貢献(しかも主観的感覚でよい)である。
「与えよ」ということですかね。この辺りは、「GIVE & TAKE」という本の方が同じような内容で詳しく説明されてます。
そして最後に
「人生とは、連続する刹那。「いま、ここ」に生きるしかない。」
と締めくくられて終わります。かっこいい言葉ですね。刹那。
では最後に、私がこの本を読み終わった当時、どう思ったのかです。
第三夜の時点で、だいぶ楽になってました。
そして、第四・五夜を読み、迷いなく独立・起業に進もうと決意しました。
人生は競争ではない、承認欲求を捨て、他者貢献で生きていこうと決めてました。
この本を手に取ったのが11月で、12月には何の迷いもなく「辞めます」と伝えていました。
まとめ
以上です。
最後に、この本が響く・響かないは、かなり個人差があると思います。
ただ、何らかの不安を持っている人が多いため、多くの人に受け入れられ、売れているのだと思います。
読む人によっては、「なるほど、そういう考えもあるな」で終わる可能性もあります。
一方で、盲目的に過信するのも危険だと思います。特に、しっかり理解していれば問題ないと思いますが、部分的に切り取って誤った解釈で行動指針としてしまうのは危険です。
例えば「承認欲求を捨てた」結果、傍若無人にふるまうのは違います。
あくまで「他者貢献」という基準があります。
他にも、アドラー心理学の対立概念としてフロイト的心理学が書かれてます。
だからと言って、フロイトを否定することとは違うと思います。
私はフロイト心理学もきちんと読みましたし、素晴らしい考え方で、納得性も高いです。
結局は、自分が生きる基準としてどのような考え方がマッチするのかだと思います。
私にはアドラー心理学の考え方が、非常にしっくりきて、かつ当時の悩みを全て吹っ飛ばす考え方でした。
本当におすすめの1冊です。多くの方に読んでほしいと思います。ちなみに続編もあります。
他の本紹介にご興味のある方は「まとめ記事」を参考にしてください