中小企業診断士一次試験 経営法務について
今回は、中小企業診断士試験の一次試験7科目のうちの1つ、「経営法務」について、解説していきます。
この科目は、難しいです。
暗記科目ではあるものの、暗記知識だけではなく、企業経営理論のように複雑な日本語の選択肢があったり(ようするに判断にかなり迷う選択肢)、会話形式の問題が出たり、更には英文も出ます。
泥沼にはまらないよう、頻出論点をしっかりおさえることに集中しましょう。
なお、私はこの科目と経営情報システムは両方とも56点で科目合格に届いてません。
あくまで、高得点を取るためのポイントではなく、一次試験の総勉強時間200時間で受かった独学者が、それぞれの科目をどのようにとらえ、どのような戦略で臨んだか、という点を参考にして頂ければと思います。
中小企業診断士試験にご興味のある方は「まとめ記事」を参考にしてください
目次
1.科目の概要について
経営法務は、2日目におこなわれます。
主要科目は初日に終わっており、気分的には比較的リラックスして臨めると思います。
試験時間は60分です。
基本的には1問4点の25問で構成されておりますが、平成26年度は一部の問題が5点、平成28年度は1問5点の20問となっておりました。
さすがに、1問5点は配点が大き過ぎますよね。
平成28年度は何か意図があって(例えば合格率を調整したいとか)、1問5点にしたのだと思いますが、戻ったということは今後も1問4点25問が続くと思います。
次に合格率の推移を見てみましょう。
直近5年で判断すると、全7科目で最も科目合格率の平均が低い科目になってます。
そして、「伝説の平成30年度」です。
平成30年度は、難化しすぎて、全員に「8点の加点」が行われました。
その上で合格率5.1%だったので、加点前は全科目史上最低の合格率だったのでしょう。
なぜ合格率が低いのか?
それは、「基本的には暗記科目であるものの、単純な暗記のみでは対応できない問題があること」、「英文の問題など始めから捨てられている部分があること」、「法改正についていけないことがある」などだと思います。
例えば、相続関連の問題など暗記知識だけで対応できない問題があります。
また、英文の問題は、私は初めから得点する気はありませんでした。
鉛筆コロコロです。
また、法律を扱っているので、「過去問と答えが変わる」ケースがあります。
このようなことから、得点が低くなるのだと思います。
そもそも、二次試験との関連性もないので、初めから70点取れればラッキーくらいの気持ちで受ける人も多いと思います。
二次試験との関連性はほぼないのですが、過去に二次試験で「あえて特許を取らない理由」を問う問題は出ました。
会社法・知的財産権などは実務においても触れる機会が多いと思うので、基本的なことは抑えておきましょう。
この「基本的なことを抑えておく」ことがこの科目を勉強する上でのゴールであるとも言えると思います。
2.会社法
この科目については、「会社法」「知的財産権」「民法・他」で分かれてます。
効率的な学習は、「会社法」と「知的財産権」のウェイトを高め、「民法・他」は過去問で確認程度とすることです。
「会社法」と「知的財産権」からの出題が多く、かつ「民法」は幅が広すぎるためです。
では、「会社法」を具体的に見ていきましょう。
ざっくりと、このようなことを学びます。
株式会社といっても、作り方・株主総会・役員の人数・任期・株式の譲渡に関することなど非常に幅広く学びます。
持分会社とは合同会社のことであり、株式会社と同じく仕組みなどを学びます。
組織再編等とは、会社分割や事業譲渡のことであり、非常に重要な分野です。
債権者の保護手続なども頻出となっております。
倒産は、破産・清算・民事再生などの違いを学びます。
実務におけるイメージは、「会社を作りたい」「株式を発行して資金調達をしたい」「M&Aをしたい」などの相談を受けることは多いと思います。
そういった場面に遭遇しても、基礎知識は分かっている必要があるため、このような学習は必要だと思います。
また、M&Aに特化する場合、また再生と倒産は表裏一体であり、再生に特化する場合も多くの法律知識は必要です。
3.知的財産権
次は知的財産権です。
具体的には以下のようなことです。
特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つを産業財産権と言います。
これらの、出願方法・権利期間などを細かく学びます。
この権利期間なども、法改正で変わったりしているので要注意です。
不正競争防止法では、周知表示混同惹起行為など、難しい言葉が出てきますが、過去問で具体例が出てくるので具体例で覚えていきましょう。
このように、法律を覚えた上で、実際の具体例が違法なのか・そうでないのか、のような問われ方をするので、ただの暗記のみでは対応できない問題になったりします。
超頻出分野なので、それぞれの基本知識などを暗記した上で、過去問などの具体例をよく確認しましょう。
実務においては、特許を取りたいという相談を受けるというケースもあれば、逆に「これは権利を侵害するのではないか」というケースに遭遇することも考えられます。
例えば、「スナック 瑠衣・ヴィトン」をオープンしたいという相談を受けたらどうでしょうか?
訴訟にまで発展したら弁護士の領域ですが、その前の「知的財産権を守る」「侵害しないようにする」ということを、入口段階である程度把握している必要が、実務においてもありますよね。
4.民法・他
最後は、民法・他です。
頻出なのは、時効・効力などを問う問題、債券・契約に関する問題、そして相続に関する問題です。
いずれも実務において非常に重要ですよね。
民法は非常に範囲が広いのですが、頻出部分については覚えておきましょう。
一方で、問題が解ける解けないは別問題になります。
単純な知識の暗記ではなく、複雑なケースの正誤を問う問題が多いからです。
ここは割り切りましょう。
民法の改正は、『チャンス』です。
なぜなら、問題を作りやすいからです。
改正点を理解しているだけで、得点アップの可能性があります!
あとは、国際取引で英文契約が毎年出るのですが、これは私は捨ててました。
何となく文章を読んでみて、選択肢を読んでみて、それっぽいの選ぶだけでした。
本番では1問取れた気がします。
英語が得意でどうにかなる問題でもないので、深入りする必要はないと思います。
5.まとめ
以上、「会社法」「知的財産権」「民法・他」に分けての解説でした。
頻出となっている分野はしっかり暗記しましょう。
暗記知識がそのまま点数に繋がらない問題もあり、難易度の高い科目ですが、基本的な問題も出るので60点前後を確保するのはそれほど困難ではありません。
科目合格できなくても、7科目で420点取れればよいのです。
実務においては、簡単な法律的知識をおさえておき、いざという時には弁護士にスムーズに橋渡しをできるようにしておくというイメージでしょうか。
再生・知的財産権・M&Aなどを専門にやる場合はしっかり勉強しておくとよいと思います。